冬景色に彩りを添えてくれる山茶花と椿。艶やかな花びらや凛とした咲き姿などが、とてもよく似ています。似ているがゆえに「山茶花?それとも椿?」と迷うこともあるのではないでしょうか?
山茶花と椿の違いは、「花の散り方」「開花時期」「葉のギザギザ」をはじめとした5つがポイント。山茶花と椿の違いや、簡単な見分け方を紹介します。
山茶花と椿の違い(1)花の散り方
山茶花と椿の違いで、もっとも分かりやすいのは「花の散り方」です。
- 山茶花・・・・・・花びらが一枚ずつはらはら落ちます。
- 椿・・・・・・・・・・花首からぽとりと花全体が落ちます。
花びらが分かれて、はらはらと散っていくなら、山茶花です。
一方で、花全体が丸ごと落ちるなら椿です。
花が咲いているなら、花の散り方を見るのが、もっとも簡単な見分け方ですね。
山茶花と椿の違い(2)花が咲く時期
山茶花と椿の見分け方として、もう一つ知っておきたいのが「開花時期」です。地域や品種によっても異なりますが、開花時期は次のような違いがあります。
- 山茶花・・・・・・11月~12月。
- 椿・・・・・・・・・・12月~4月。
このように、山茶花が先に咲き、後から椿が咲きます。時期としては、山茶花は晩秋から冬にかけて咲き、椿は冬から春先にかけて咲くということです。
山茶花が咲き始めるのは、紅葉が始まる晩秋。咲き揃うころには秋もそろそろ終わり。山茶花はいわば、冬の到来を知らせてくれる花なのです。
そして童謡『たき火』で「さざんか さざんか さいたみち」と歌われるように、懐かしい冬の情景が似合う花でもありますね。
山茶花を追うようにして咲き始めるのが椿です。椿の開花時期は、12月ごろから。まるで本格的な寒さを待ち、新年を寿ぐために咲くかのよう。
そして、椿は冬の花ではありますが、意外なことに春先まで咲きます。椿という字は、「木」に「春」と書きます。椿が咲けば春近し……と思うと、なおさら椿の開花が待ち遠しくなりませんか?
山茶花と椿の開花時期、違いをまとめるなら、「秋が終わりを告げ、本格的な冬に向かう季節に咲く」のが山茶花、「厳しい寒さに耐えながら、春の兆しが感じられる季節まで咲く」のが椿と言えそうです。
山茶花と椿の違い(3)花姿
山茶花と山茶花の違いとして「花姿」も挙げられます。品種によってもやや異なりますが、こんな違いがあります。
山茶花は、根元から四方に広がるように咲きます。このように花びらを華やかに広げるからこそ、一枚ずつ繊細に散りゆくのです。
はらはらと山茶花の花びらを落とす雨を指す「山茶花散らし」と呼びます。地面を埋め尽くす山茶花は、まるで紅色の絨毯さながら。冬に降る冷たい雨も、山茶花散らしの雨だと思うと、風情あるものに感じられますね。
一方の椿は、花が開き切らず、いわゆる筒状のままで開花します。
なんと気高い姿でしょうか。なお、花椿は資生堂のシンボルとして有名です。日本人女性の美を真摯に追求してきた資生堂と椿は、イメージがぴたりと重なり合います。
そして椿は、究極の美意識をもつココ・シャネルが生涯愛した花でもあります。椿の英語名である「カメリア」(Camellia)は、シャネルの代表的モチーフとしてもあまりに有名ですね。
山茶花と椿の違い(4)葉のギザギザ
もう一つ、山茶花と椿の見分け方で知っておきたいのが「葉のギザギザ」です。花が咲いていない時期であれば、葉っぱで見分けましょう。
- 山茶花・・・・・・ギザギザが深い。
- 椿・・・・・・・・・・ギザギザがない(もしくは浅い)。
たとえばこの葉のように、縁に深いギザギザがあれば山茶花ということです。
一方で、こちらは椿。縁のギザギザが浅く、あまり目立ちません。
山茶花と椿の違い(5)葉の姿
椿と山茶花の違いとして、葉にこんなヒントも隠されています。
<葉の大きさ>
- 山茶花・・・・・・3~7cmとやや小ぶり。
- 椿・・・・・・・・・・5~12cmと比較的大きめ。
<葉脈>(太陽にかざして見た場合)
- 山茶花・・・・・・白く透き通る。
- 椿・・・・・・・・・・黒い。
<葉の裏側の毛>
- 山茶花・・・・・・葉脈に沿って毛がある。
- 椿・・・・・・・・・・ほぼ毛はない。
花が咲いていない時期に見分けようと思ったら、葉の大きさを見たり、太陽にかざしてみたり、裏返して見たり、いろいろ試してみてくださいね。
ただし、見分けが難しい品種もあります
山茶花と椿の違いを説明してきましたが、実は見分けがむずかしい場合もあります。
山茶花も椿も、どちらもツバキ科ツバキ属の花です。つまり仲間ということ。しかも品種改良が進んだことで、より似た性質をもつ品種も出てきているのです。
たとえば、山茶花と山茶花の交配種である「寒椿」はその代表例。椿でありながら、花びらが一枚ずつ散ります。また開花時期も早めです。
椿も山茶花も、その品種は多岐にわたります。それだけ日本の冬の暮らしになじみ、愛され続けてきたということでしょう。
あまり厳密に区別することにこだわらず、ただ純粋に美しさを愛でる……という愉しみ方が適しているのかもしれませんね。
山茶花や椿を庭木として植えるなら?
山茶花や椿は、冬に花をつける庭木として愛されてきました。花だけではなく、艶やかな葉も山茶花や椿の魅力の一つ。常緑樹なので冬も深緑を誇り、生垣として、そして目隠しやガーデニングの背景としても活躍します。
「庭木に植えようかな」と思う方のために、実際に育てていて実感するポイントを3つお伝えします。
1. 両方植えれば、冬の間ずっと愉しめます
山茶花と椿、どちらを植えようかと迷っているなら、両方植えることをおすすめします。
山茶花と椿は、少しずつ開花時期が異なります。重なる時期もありますが、山茶花は秋の終わりから冬に向けて咲き、椿は冬から春先にかけて咲きます。
つまり両方を植えておけば、冬の間中どちらかが、もしくは両方咲いているということです。どちらを植えようか迷ったら、ぜひ両方を植えてみてください。
山茶花の開花に冬の到来を知り、椿の開花に春を待ちわびる。山茶花と椿があれば季節の移ろいを知るよすがとなり、季節を愉しむことにつながります。
2. 剪定は3~4月に、花芽ができてからは切らないこと
山茶花や椿の樹形を整えるには、剪定が欠かせません。山茶花と椿、どちらとも花が咲き終わった後、「3~4月」を目安に剪定してあげましょう。
ただし後ほどお伝えしますが、4月になれば毛虫が活動し始めます。できれば3月終わりごろに剪定しておくと安心です。
くれぐれも避けたいのが、6月以降に剪定することです。
春を迎えて枝をぐんと伸ばした後、6月以降は花芽を形成します。花芽ができてから剪定すれば、せっかくの花芽を落としてしまう可能性もあります。
翌年もたっぷりと花を咲かせるために、花芽ができてからの剪定はやめましょう。
ただし花芽がふくらみ始める9月ごろ、花芽を確認しながら、不要な枝を切り戻すのは構いません。寒い冬に美しく咲く姿を想像しながら、大事に剪定してあげましょう。
3. 山茶花も椿も毛虫に注意を!
山茶花と椿の花を間近で愛でるとき、そしてお手入れをするときに気をつけたいことがあります。
それは「山茶花と椿は、チャドクガ(毛虫)がつきやすい」ということです。
チャドクガは毒針毛(どくしんもう)と呼ばれる毒を含んだ微細な針を持ち、触れるとかゆみや痛みなどを伴う毛虫皮膚炎を起こします。
直接触らなくても、何かの拍子で毒針毛が飛び、皮膚炎を起こすこともあるため注意が必要です。
もしも蚊に刺されたような跡ができ、赤みが広がったら、毛虫皮膚炎かもしれません。こすると針が深く刺さる可能性があるため、まずは流水で十分すぎるほど洗い流しましょう。
その上で、すみやかに皮膚科を受診することをおすすめします。
皮膚科では、炎症をおさえるための抗ヒスタミンやステロイドの塗り薬が処方されます。正しく薬を使えばきちんと炎症は引くので、安心してくださいね。
まとめ
山茶花と椿はとても似ていますが、見分けるポイントも多い花です。ただし品種改良も進んでいますので、その多様さを純粋に愉しむのも良いでしょう。
ひんやりとした空気の中で、可憐に咲く冬の花として愛されてきた山茶花と椿。謙虚な佇まいの中に秘めた美しさを愛でれば、冬の寒さも愛しく感じられそうです。