あやめと菖蒲、杜若(かきつばた)。どれもよく似ています。しかも、あやめもしょうぶも漢字で書くと菖蒲。「違いがよく分からない!」という方も多いのではないでしょうか?
実は、花びらの付け根を見れば一目瞭然。見分け方を知っていると、きっと楽しくなります。あやめと菖蒲、杜若の違い、見分け方を紹介します。
あやめ・菖蒲・杜若の違い(1)花びらの付け根
あやめと菖蒲、杜若(カキツバタ)の見分け方で、もっとも分かりやすいのが花びらの付け根を見ること。
「一体どれ?」と迷ったら、花びらの付け根を見てください。見分けるためのサインが見つかります。
- あやめ・・・・・・・網目状
- 菖蒲・・・・・・・・・黄色
- 杜若・・・・・・・・・白い筋
このように、網目状の模様があればあやめです。
続いて、こちら。付け根に黄色い模様があれば菖蒲です。
そしてこちらは、すーっと白い線が通っています。白い筋があれば杜若です。
3つの違いをまとめると、花びらの付け根を見たときに、模様が網目状ならあやめ、黄色い模様が入っているなら菖蒲、白い筋が通っているなら杜若。こうして整理すると、すっきりします。
あやめ・菖蒲・杜若の違い(2)育つ場所
あやめと菖蒲、杜若は、実は育つ場所も違います。
- あやめ・・・・・・・陸地
- 杜若・・・・・・・・・水の中
- 菖蒲・・・・・・・・・水辺
あやめと聞くと、水辺のイメージがありませんか?でも実は、陸地で育つ花なんです。
一方、杜若は水を好みます。だから杜若が育つのは、池や沼地など常に水がある場所。水の風景がよく似合いますね。
そして菖蒲は、いわば中間です。
菖蒲が好むのは、いわゆる水辺。水の流れに沿うように、菖蒲が群生して咲く姿は圧巻。初夏の風情を演出します。
あやめ・菖蒲・杜若の違い(3)咲く時期
あやめと菖蒲、杜若を見分けるなら、咲く時期も一つの目安です。咲く順番に並べると、こうなります。
- 杜若・・・・・・・5月中旬
- あやめ・・・・・5月中旬~下旬
- 菖蒲・・・・・・・6月~7月中旬
杜若とあやめが咲き始めるのは5月中頃。新緑が茂り、夏の気配が漂い始める頃です。
やや遅れるようにして、菖蒲が咲き始めます。菖蒲が咲くのは6月~7月中旬、ちょうど梅雨の時期に当たります。
雨が多い時期に咲く菖蒲は、雨に濡れる姿も優美。紫陽花と一緒に楽しむこともできます。
しかも花期は、およそ1か月。長く咲くのも菖蒲の特徴です。
(1)あやめ
あやめは、乾いた土地で育ちます。花びらの付け根を見れば、網目状の模様があるはず。背丈が低めなのも特長の一つ。30~60cmほどと、やや小ぶりです。
(2)菖蒲
菖蒲は、花びらの付け根が黄色く色づいています。梅雨の時期に見頃を迎えるのも、菖蒲の特徴と言えるでしょう。
ちなみに菖蒲は日本人の美意識に合い、古くから愛されてきました。江戸時代から改良が重ねられたのだとか。
花の色は、白、桃、紫、青、黄など多数あり、絞りや覆輪などとの組み合わせを含めると5,000種類あるといわれています。
5000種類とはすごい数ですよね!全国各地に菖蒲園がありますので、梅雨の楽しみにぴったりです。
(3)杜若
そして杜若は、水の風景が似合う花。花びらの付け根に白い筋がすっと入っているのが目印です。
杜若は、尾形光琳の『燕子花図屏風』でも知られる花。ちなみに漢字は杜若ではなく、「燕子花」と書きます。
さらに杜若は、平安時代の歌人・在原業平が「かきつばた」の文字を詠み込んだ和歌、「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」でも有名ですね。
豆知識!菖蒲湯のショウブは、花菖蒲と別物!?
最後に一つ、豆知識を。菖蒲というと、端午の節句のときに入る「菖蒲湯」を思い浮かべる方も多いでしょう。
でも実はあの菖蒲、ここまで見てきた、いわゆる“花菖蒲”とはまったくの別物なんです。
- 菖蒲・・・・・・・・・サトイモ科(もしくはショウブ科)
- 花菖蒲・・・・・・・アヤメ科
そうなんです!菖蒲湯のときに使うのは、サトイモ科(もしくはショウブ科)の植物。花もとても地味で、まるでガマの穂のようなかんじ。
あいにく掲載できそうな勝負の花画像がなかったために、ガマの穂の画像を。まさにこのような姿なんです。
(画像はガマの穂です)
興味のある方はためしに、ご自身で「菖蒲 サトイモ 花」というキーワードで画像検索してみてください。「え、これが?」と驚かれることでしょう。
まとめ
「何れ菖蒲か杜若」(いずれあやめかかきつばた)という言葉の通り、たしかにあやめと杜若はよく似ています。さらに花菖蒲も入ると、さらに複雑に……。それもそのはず、すべて「アヤメ科アヤメ属」の仲間なんです。
でも、花びらの付け根を見れば、すぐに見分けがつきます。これまで、あやめと菖蒲、杜若の違いが分からず悶々としていた方は、ぜひ見分け方として活用してくださいね。