梅雨に咲く花は、紫陽花だけではありません。睡蓮やクチナシ、花菖蒲、タチアオイなど、雨が似合う花がたくさんあります。
しとしと降る雨に打たれると花色も映え、輝いているかのよう。雨の中でひたむきに咲く姿に風情が感じられる“梅雨の花”を5つ紹介します。
梅雨の花(1)紫陽花(あじさい)
梅雨に咲く花といえば、やはり代表格は紫陽花です。しっとりと濡れた姿は、格別の美しさがありますね。
日本各地には、紫陽花の名所がたくさんあります。たとえば、“明月院ブルー”の愛称で知られる鎌倉・明月院。一度は訪れたい紫陽花の名所です。
明月院に植えられているのは、日本古来の品種である“ヒメアジサイ”。青さが少しずつ深みを増し、神秘的な美しさです。
鎌倉には長谷寺もあります。山の斜面をいっぱいに紫陽花が咲き誇ると、神秘的な美しさです。
京都の三室戸寺も、紫陽花の名所として有名です。
植えられている紫陽花は、全国屈指の1万株。晴れた日もいいですが、しっとり雨に濡れた紫陽花を見に行きたいものですね。
ちなみに紫陽花にはたくさんの別名があります。たとえば、繊細に移りゆく色を表現した「七変化」。そして、愛らしいころりとした姿を毬に見立てた「手毬花」。
どれも紫陽花の美しさにますます魅了される言葉ばかり。詳しくは別記事で紹介しています。ぜひあわせてご覧くださいませ。
梅雨の花(2)睡蓮(すいれん)
水辺に浮かぶ涼しげな睡蓮も、梅雨に咲く花の一つです。雨粒を浴び、白やピンク、黄色の花色がみずみずしく輝くさまは、梅雨ならではの美しさ。雨がよく似合います。
睡蓮は、印象派を代表するフランスの画家クロード・モネが愛した花としても有名です。
モネが生涯をかけて描いた『睡蓮』シリーズの作品は、膨大な数にのぼります。およそ200点残っているのだとか。
モネの睡蓮シリーズといえば、近年では岐阜・関市の“モネの池”が話題になっています。
通称“モネの池”は、根道神社境内にある池です。透明度が高く、光の加減によって水が透き通ったり、エメラルドグリーンに見えたり……。
梅雨の時期には睡蓮が咲き、池の中では錦鯉が悠々と泳ぎ、まさにモネの『睡蓮』さながらです。
ちなみに、睡蓮と蓮の違いはご存じですか?分かりやすいのが、“花が咲く位置”と“葉の形や位置”を見ることです。
睡蓮の花は、水面に浮くかのように咲きます。葉には切れ込みが入り、水面に浮かんでいます。
一方の蓮は、こちら。
蓮は、水面より高い位置で花を咲かせます。葉は水面に浮かぶものと、高く持ち上がる葉があります。
ぜひ睡蓮や蓮を見かけたら、葉や花に注目してみてくださいね。
梅雨の花(3)梔子(クチナシ)
クチナシは梅雨ごろに清楚な純白の花を広げ、あたりを上品な甘い香りで満たしてくれる花です。
昔からよく見る一重以外に、八重の花びらもあります。
雨の中漂うクチナシの香りは、まさに梅雨の風物詩。その香りの良さから、ジンチョウゲやキンモクセイと並び、“三大香木”と呼ばれています。
クチナシは、夜にも香り立ちます。明治時代の俳人・正岡子規の俳句に、クチナシの香りを詠んだこんな一句があります。
薄月夜 花くちなしの 匂いけり
これは、「月の光がぼんやりとさす夜、ふとクチナシの香りを感じた」という句。おぼろ月夜で花の姿が見えなくとも、その甘い香りで存在を感じる……とても風雅な一句ですね。
梅雨の湿った空気を渡り、夜道にほんのり香るクチナシ。梅雨ならではの趣を感じます。
梅雨の花(4)花菖蒲(はなしょうぶ)
花菖蒲は水辺を好み、梅雨空のもと穏やかに咲く花です。どんよりとした灰色の空に、しっとり落ち着いた雅な色合いがよく映えます。
一つひとつの花の存在感も魅力ですが、群生すると見事。見渡す限り広がる花菖蒲の光景には、思わずため息がこぼれます。
ちなみに、端午の節句のときにお風呂に入れる「菖蒲」と、梅雨に咲く「花菖蒲」。別物だということをご存じですか?
- 菖蒲・・・・・・・サトイモ(もしくはショウブ)科。花は黄緑色で棒状、目立たない。
- 花菖蒲・・・・・アヤメ科。花は、青や紫、白などの華やかな姿。
サトイモ科とアヤメ科、そもそも違う仲間なんですね。菖蒲の花は、まるでガマの穂のよう。とても質素で、たしかに別物です。
ただしその分、葉は香り豊か。薬効があると言われ、葉が主役の植物です。
一方の花菖蒲は、“花”とつくだけあって、花が主役。見頃には、ぜひ菖蒲園に足を運んで、華麗な咲き姿を愛でたいものですね。
ちなみに菖蒲といえば、あやめや杜若との違いが分かりにくくありませんか?
実は、菖蒲とあやめ、杜若を見分けるにはコツがあります。花びらの付け根を見れば、すぐに違いが分かるんです。詳しくは別記事で紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
梅雨の花(5)立葵(たちあおい)
タチアオイは2m以上もの花茎が伸び、下から順に咲く花です。
タチアオイの花は、まるでハイビスカスのよう。赤やピンク、白など鮮やかで大ぶりの花が、梅雨のどんよりとした空に華やぎを与えてくれます。
タチアオイには“梅雨葵”(つゆあおい)という別名があります。なぜなら、梅雨の訪れと、そして終わりを知らせてくれるから。
タチアオイが咲くのは、梅雨入りの頃。そして下から上へと咲き進み、てっぺんまで花が咲くと梅雨が明けると言われています。
昔は田んぼのあぜ道や民家の軒先などで見かけたタチアオイですが、近年では見る機会がめっきり減りました。
でも、探してみればきっと見つかるはずです。道端やちょっとした空きスペースなどに、タチアオイがありませんか?
梅雨と共に咲き進む花を観察していると、梅雨の感じ方が変わるかもしれませんね。
まとめ
梅雨になれば雨が降り続き、出かけるには雨支度が必要です。洗濯物がからっと乾く晴れも恋しくなりますよね。
でも、雨がしとしと降る梅雨だからこそ出会える花、美しさが増す花があります。「梅雨だからこそ」と言い聞かせ、梅雨の花を愛でながら心豊かに過ごしたいものですね。